その旋律には、運命の残酷さがにじむ
若くして国際的な名声を得て
20世紀最高のチェリストと謳われた彼女
ジャクリーヌ・デュ・プレ
しかし、26歳で病魔に襲われ
42歳で、その生涯は閉じられた
やがて、甘く香る白いバラが誕生すると
早すぎる死を悼み
彼女の名が与えられたという
夭逝の天才は、美しい音色を奏でながら
今も世界中で咲き誇る
『レーヴディソール』
その天才牝馬もまた、悲運に泣いた
デビュー2戦目
紅一点で挑んだ、初めての重賞レース
男馬たちを怯ませる、大外一気の快勝劇
2歳女王決定戦では、同期の乙女たち相手に
既に役者が違うところを見せつけた
必死に食らいつくライバルたちを交わす、優雅な走りに
人々は、かぐわしき夢を見る
空まで翔けて行かんとする、レーヴディソール
このレースの単勝支持率は
重賞レース史上最高の81.4%
プレッシャーすら楽しむかのように
ターフを舞う姿は、神々しい
だが、これが最後の飛翔となるとは
彼女の夢を奪った、大きな怪我
復帰こそ果たすも
再びあの輝きが戻ることはなかった
悲運は
人の心を打ちのめす
現実を受け入れ
魂の息吹を待つことが
乗り越える
唯一の術かもしれない
レーヴディソール
牝馬 芦毛
2008年4月8日生まれ
父:アグネスタキオン
母:レーヴドスカー
生涯成績:6戦4勝
獲得賞金:1億5493万3000円
主な勝ち鞍:チューリップ賞(2011年)、阪神ジュベナイルフィリーズ(2010年)、デイリー杯2歳ステークス(2010年)
■前回の土曜名馬座