土曜名馬座アルバム

チャンピオンベルトを掴む寸前。彼は、悲痛な敗北を喫した。ニューヨーク生まれ、武器は強烈な右パンチ。ジェームス・J・ブラドック。家族のために必死に戦うも、負けは込む一方、時代は世界恐慌。その渦中で、彼も全てを失った。だが、再びリングへ。圧倒的に不利ななか、チャンピオンに挑んだ。最大の番狂わせ。ついに、ベルトを掴んだ…

MONGOLIA。広い草原を駆ける馬は、まるで、海原を漂う船のごとく。太陽が昇り、沈むまで、彼らは、ひたすら走り続ける。馬上で生きる騎馬民族。かつて彼らは、ユーラシア大陸の60%をも支配していた。最大の祭りでは、1,000頭あまりの馬が、30kmほどのコースを競う。彼らにとって、馬は家畜ではない。かけがえのない友であり、宝だ…

この国では毎年、あまたのレースが開催され、世界有数の規模を誇る。だが、3,000m越えの重賞レースは5つしかない。長距離を制する彼らは、スタミナがあり、強靭な心肺機能を持つ。高齢になっても、一線で戦い続け、熟成していく彼らは、ペース配分も卓越している。ロングランで輝いたスペシャリストたち…

イタリアとスイスの国境。ヨーロッパで2番目に高い峠。ステルヴィオ峠 。48か所ものヘアピンカーブ。2,000mに及ぶ高低差を駆け上がる。最も美しく過酷な戦いと言われる。自転車レースの舞台として知られる。ジロ・デ・イタリア。ステルヴィオ…。走る者にとって、ここは聖地だ…

彼らがデビューしたのは、アイルランドがEUのお荷物と揶揄されていた時代。当時、人口320万人の小国で、ローカルバンドの一つに過ぎなかった。U2。だが、母国をベースに活動しながらも、全世界を熱狂させていく。無邪気なティーンエイジャーが、知性とシワを蓄えた男たちへと、成長する旅路。彼らの音楽DNAには、アイルランドのソウルが組み込まれている…

この大陸は、8割が荒野だ。アジアの南…、赤道を越えた南半球に位置し、Down Underとも呼ばれる。オーストラリア。このアウトバックに、馬が持ち込まれたのは18世紀。ヨーロッパから、はるばる船で渡ってきた。厳しい環境を生き抜いた彼らは、スタミナがあり、足腰も強い。広大な土地で育ち、品種改良をされた、Down Underのサラブレッド。その進化は早い…

北アフリカの大地で、静かに生きた…。彼は、文明とは距離を置く作家だった。ポール・ボウルズ。砂漠の風景の中で、彷徨える魂を描く。どこでもない場所から、膨大な地域を通って戻ってきた。映画『シェルタリング・スカイ』。映画化されたビジュアルは美しく、そして、果てしなく悲しい。砂漠の魔力が、全てを包み込むように…

あのヒットメーカーは10代の頃。古い8ミリフィルムの編集を依頼される。J・J・エイブラムス。フィルムは、師と仰ぐ監督のものだった。スティーヴン・スピルバーグ。自力でキャリアを積み重ねた若き監督は、ついに…。二人で共に、一つの映画を作ることになる。少年時代から、フィルムカメラに夢中になった彼ら。恩師にオマージュを捧げ、夢を叶えていく…

もしもあの時、運動靴を失わなければ、彼は、全力で生きる輝きを見せただろうか？イランの貧しい家庭に暮らす兄弟の物語。映画『運動靴と赤い金魚』。兄は妹の靴をなくし、二人は、一足の靴を交互に使うことになる。運動靴が景品となったマラソン大会に参加するが…。精魂尽き果てた兄を、金魚たちは優しく迎えた。まるで大きな愛で包むように…

勝つためのルートは、ただ一つ。一刻も早く、見つけ出さなければならない。銀河に瞬く星の数ほどのルートの中から。冷戦の時代、チェスの試合は、代理戦争の様相を呈していた。34連覇のソ連に挑む、アメリカのプレイヤー。チームには神父まで参加し、心を支えた。頭脳を限界まで酷使した彼は、神の一手を披露。アメリカに初勝利をもたらす…